第13回電撃小説大賞<大賞>受賞作、ちょっと古いけど、こういうコンテンツ作るならまずはこの本を紹介したい。
この本の解説にも似たようなこと書いてたけど、買い求めたときはそれほど期待しちゃいなかったのに、読んでるうちにぐいぐい引っ張り込まれていた他感じ。
「小さな少女の崩壊と再生の物語。」のコピーの通り、ヒロインの"ミミズク"という小女の最初のぶっ壊れぶりはなかなか強烈なモノがある。
両手両足に枷をはめられ、額に焼印、やせ細った手足を引きずって魔物の住む夜の森という森に立ち入り、魔物の王に向かっての第一声が「あたしのこと、食べてくれませんかぁ………!?」。
まぁ、ぶっちゃけ このセリフは狙ってるような気がしないでもない。
狙ってるような気はするけど、夜の森に居る間のメインテーマがコレということもあり、実は結構重要なセリフだったりはする。
しかし、この「ミミズクと夜の王」という話自体は、正直に言って上手に書けているとは言いがたい。
これは明らかに後付け設定だろうというようなものが多々見られたり(おそらく書き始めたときにはあんまり重要じゃなかったんだと思われる)、前後の文脈が
つながっていなかったり。
ミミズクが夜の王に名前を付ける(実際には少しニュアンスが違うが)というシーンがあるのだが、名づける前にもう文章中にその名前が使われていたりというのもあった。
それでも、それらを補って余りある魅力がこの本の中には溢れている。
キャラクターたちは物語の中でいきいきと動き、一人一人が非常に魅力的だ。
"萌え"や"エロティシズム"など、俗っぽいものはこの本には一切無い。
いや、読者によって感じ方は違うだろうから一概にそうは言い切れないんだけど…。
それでもオタク街道まっしぐら、フランダースの犬最終回で大爆笑な私にもこの本は素直に感動できた。
何よりもまず、感情表現が非常に直球、超ストレート。
不純物など一切無く、キャラクター一人一人の純粋な想いのぶつかり合いがこの話を形作っている。
主要(登場、にあらず)キャラクターは皆自分に正直で、最終的に嫌いになりそうな人物は一人もいない。
そして、キャラクターだけでなく、物語り全体を流れている空気みたいなものも非常にストレートで嫌味が無い。
コマゴマとした設定が無いのもこの話の特徴だと思う。
それこそ御伽噺レヴェルの平坦で奥深い雰囲気。
余計な設定が無いからこその見透しの利く澄んだ世界観。
夜の王は最後まで夜の王で、本名すら明らかにされなかったし、ミミズクにいたっては本名があるがどうかも疑わしい。
作者の提示した少しの材料と、読者の想像で物語は明確な形を取っていく。
そういう意味では、挿絵どころかキャラクターの絵すら一切無いものプラスにはたらいているように思う。
もう、読んでて最後のほうはティッシュ箱を傍らにズビズバ鼻かみながら「うおぉ…ミミズクぅ…」みたいな感じだったし。
ライトノベルで涙腺が緩んだのってこの本だけなんじゃなかろうか…今のところ。
一部、本から抜粋…
「あのね、あのね、あのね……!」
言わなければならないことが、たくさんある気がした。ありがとう。ごめんなさい。ありがとう。
そんな言葉で足りるのだろうかとミミズクは思う。
どうしてだろう、こんなにも言葉は教えてもらったのに。
言葉は、覚えれば覚えるほど、足りないような気がするのだった。
抜き出したところ読んだだけじゃ あ〜そ〜ですか。って感じだけどもっ!
本全体を通して読んだときにこの一説がどれだけの威力を、いや むしろ破壊力を持つことか!
これはもう、ライトノベルというよりも、ほとんど文学作品の領域にあるんじゃないだろうか…もっと文章がしっかりしてれば。
いや、ホント、文章構成は決して上手いと言うことは出来ないんだけども、それでも。
読んだこと無い人は定価530円だし、書店に無ければ取り寄せて貰ってでも読む価値はあると思う。
これはホントに何のためらいも無くお勧めできる一冊。
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